子どもが失敗を怖がるのはなぜ?「失敗を楽しめる子」に変わる関わり方

挑戦を楽しむ子どもたちのイメージ

「うちの子、失敗をすごく怖がるんです」

保護者の方から、こうした声を聞くことが増えました。

間違えないように。恥をかかないように。できれば、やらずに済ませたい。

この慎重さ自体は、悪いものではありません。
ただ、失敗しない選択ばかりを重ねるようになると、挑戦する前に自分でブレーキを踏むようになります。
そして厄介なことに、その状態は外からは「おとなしい子」「慎重な子」としか見えません。

この記事では、まずなぜ子どもが失敗を怖がるようになるのかを整理します。
そのうえで、よかれと思ってやりがちな逆効果の励まし方と、
実際に子どもの反応が変わっていく環境について、教室での様子も交えながらお話しします。

先に一つだけお伝えしておくと、目指す姿は「失敗しても立ち直れる強い子」ではありません。
そもそも失敗だと思わなくなる、という状態です。

なぜ子どもは失敗を怖がるようになるのか

失敗を怖がるのは、生まれつきの性格ではありません。
そう学習してしまう環境が、子どもの周りに揃っています。

減点で評価される時間が、あまりに長い

学校のテストは、基本的に減点方式です。
100点から間違えた分だけ引かれていく。

この形式に一日の大半を占められていると、間違い=失うものという感覚が自然に染み込みます。
何かを得るために間違えた、という経験にはなりにくい構造です。

SNSには成功しか流れてこない

子どもが目にする情報は、うまくいった話ばかりです。
完成した作品、決まった技、高い点数。

うまくいかなかった過程は、ほとんど投稿されません。
その結果、「みんなは一発でできている」という誤った基準ができあがります。
実際には全員が同じだけ失敗しているのですが、それは見えないままです。

家庭の何気ない言葉が「正解第一主義」を強める

「ちゃんとしなさい」 「ほら、また間違えた」

悪気なく出てくる言葉ですが、繰り返されると間違いは指摘される対象というメッセージになります。

ここで一つ、思い出しておきたいことがあります。

失敗せずにできることは、すでに知っていることだけです。

新しいことに手を出せば、うまくいかないのが当たり前。
裏を返せば、失敗がまったく起きていない状態は、成長が止まっているサインでもあります。

【逆効果】失敗を怖がる子への、よくある励まし方

ここが難しいところで、励まし方によっては状況を悪くしてしまいます。
よくある3つを挙げます。

「失敗じゃないよ」と否定してしまう

うまくいかなかった子に、つい「失敗じゃないよ、大丈夫」と言ってしまいます。

でも子ども自身は、うまくいかなかったことを分かっています。
そこで否定されると、「失敗は、なかったことにしなければいけないもの」という印象だけが残ります。

失敗を怖くなくしたいのに、失敗を隠すべきものとして扱ってしまう。
逆の効果になります。

「次はがんばろう」で終わらせる

前向きな言葉ですが、具体的な次の一手が何もないという問題があります。

がんばりが足りなかったから失敗した、と受け取られると、次の挑戦のハードルはむしろ上がります。
必要なのは気合いではなく、「じゃあどこを変えるか」という具体的な話です。

失敗しない課題ばかり与える

自信をつけさせようとして、確実にできることばかりやらせるパターンです。

短期的には穏やかに進みますが、失敗との距離は開く一方です。
そして久しぶりに難しいことに出会ったとき、以前より大きく動揺することになります。

怖いのは失敗ではなく、失敗の「代償」

代償のある失敗と代償のない失敗を比較した図

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。

やり直せない失敗だから、怖い

子どもが怖がっているのは、失敗という出来事そのものではありません。
失敗に付いてくる代償です。

  • テストで間違えた → 点数が下がる。取り返せない
  • 発表で間違えた → 友達に見られる。時間は巻き戻せない
  • 試合でミスした → チームに迷惑がかかる。やり直しはきかない

共通しているのは、一度きりで、取り返しがつかないということ。
怖くて当然です。大人でも同じ条件なら躊躇します。

つまり「失敗を怖がるな」と言うのは、順番が違います。
怖がって当然の失敗ばかり経験していれば、怖くなるのが正常な反応です。

必要なのは、何度でもやり直せる場所

だとすれば、やるべきことははっきりします。

代償のない失敗を、たくさん経験できる場所を用意すること。

やり直しても誰にも迷惑がかからない。点数も下がらない。何度でも試せる。
そういう環境で失敗を積み重ねた子は、失敗に対する体の反応そのものが変わっていきます。

気合いで克服させるのではなく、失敗が安いものだと知っている状態をつくる。
これが現実的な道筋です。

プログラミングが「やり直せる場所」になる理由

数ある学びの中で、プログラミングはこの条件を満たしやすい分野です。
理由を3つ挙げます。

エラーは減点ではなく、手がかり

プログラムを実行すると、たいてい一度では動きません。エラーが出ます。

ただ、このエラーは評価ではありません。
「ここが違う」という情報が返ってきているだけです。
点数が引かれるわけでも、記録が残るわけでもありません。

間違いが、罰ではなく情報として返ってくる。
この経験は、学校生活の中では意外と得にくいものです。

何度やり直しても、失うものがない

書き換えて、実行して、また書き換える。
この繰り返しに回数制限はありません。

失敗のコストが実質ゼロなので、試す前に迷う理由がなくなります。
「とりあえずやってみる」が最も合理的な選択になる、という環境です。

直せば必ず動く、という信頼感

もう一つ大きいのが、原因を直せば必ず動くという性質です。

運や相手に左右されません。
うまくいかないなら、どこかに理由が必ずある。
この確実性が、「探せば分かるはず」という姿勢を支えます。

なお、ここで積み重なる小さな達成が自信につながっていく仕組みについては、子どもに自信をつけるには?「できた!」が積み重なる習い事の選び方 で詳しく解説しています。

教室で見てきた、失敗との向き合い方が変わる瞬間

ここからは、オンラインプログラミング教室「ぽてぽーと」で実際に見ている様子をご紹介します。

最初の頃は、反応がさまざま

通い始めの頃、エラーが出たときの反応は子どもによって違います。
固まってしまう子もいれば、いらだちが表に出る子などもいます。

どれも自然な反応です。
これまで「間違い=悪いこと」として扱われてきたのですから、
急に「エラーは情報だよ」と言われても、体はすぐには切り替わりません。

「わかんない!」が「あれ?おかしいな」に変わる

そして、しばらく通ううちに起きる変化があります。

通い始めの頃は「わかんない!」と声を上げていた子が、いつの間にか「あれ?おかしいな」に変わっているのです。

この差は小さく見えて、実は決定的です。

「わかんない」は、行き止まりの言葉です。もうそこから先がない。
「あれ?」は、続きがある言葉です。おかしいな、どこだろう、と自然に次が始まる。

見ていて思うのは、この子たちはおそらく、それを失敗だと思っていないということです。
乗り越えたわけでも、我慢しているわけでもない。
ただ「思ったのと違う結果が出た」という、作業の一部として処理している。

冒頭でお伝えした「そもそも失敗だと思わなくなる」というのは、この状態のことです。

エラーが出たときの反応が「わかんない!」から「あれ?」に変わることを示した図

「AIにはなんて聞いた?」から始まる会話

もう一つ、最近の変化があります。

AIの使い方に慣れてきた生徒は、エラーが出たとき、まず自分で調べます。
そのうえで、それでも分からなければ先生のところに来ます。

そのとき、私たちはこう聞きます。

「AIにはなんて聞いた?」

すると、聞き方そのものを一緒に見直すことになります。
「その聞き方だと、AIも何を答えていいか分からないかもね」「じゃあ、こう調べてみようか」——答えを教える会話ではなく、調べ方を一緒に組み立てる会話です。

エラーが「先生に助けてもらう場面」ではなく、「自分の調べ方を磨く場面」に変わっていく。
失敗との距離の取り方が変わってきている実感があります。

なお、この「自分から動く力」については 自走力のある子どもの育て方|プログラミングで「自分から動く力」が身につく理由 で詳しくお話ししています。

家庭でできる3つの関わり方

ご家庭でも、失敗の扱いを変えることはできます。
3つご紹介します。

① 結果ではなく、プロセスに触れる

テストの点数や勝敗は分かりやすい指標ですが、
そこだけを見ていると、結果が出ない日は何も残らないことになります。

代わりに、工夫した部分に触れてみてください。

「どうやって考えたの?」 「そこ、前と違うやり方にしたんだね」

数字に表れない部分を見てもらえた経験は、次の挑戦の支えになります。

② 指示ではなく、問いかけにする

「早く直しなさい」「それはダメ」と答えを渡すほうが、大人にとっては早く済みます。

ただ、それでは子どもの中で考える時間が発生しません。
少しだけ待って、問いに変えてみてください。

「どうすれば良くなりそう?」 「次はどこから試してみる?」

自分で出した答えは、言われた答えより実行されやすくなります。

③ 親自身が、自分の失敗に優しくなる

これが意外と効きます。

大人が自分のミスに厳しいと、子どもは失敗が許されない空気を敏感に読み取ります。
逆に、親が自分の失敗を笑って話せる家庭では、失敗はタブーになりません。

「今日、こんな間違いしちゃった」と話してみる。それだけで、家庭の中で失敗の扱いが変わります。

よくある質問

Q. 失敗を怖がるのは、性格の問題ではないのですか?

生まれつきの気質の影響はありますが、それだけではありません。
失敗にどんな代償が付いてきたかの経験が大きく影響します。
代償の小さい失敗を重ねられる環境があれば、反応は変わっていきます。

Q. 「失敗してもいいんだよ」と伝えるのは意味がありますか?

言葉だけでは、あまり効果がありません。
子どもは言葉より実際に起きたことで学ぶためです。
失敗したときに実際に何も失わなかった、という経験が伴って初めて意味を持ちます。

Q. どのくらいで変化が見られますか?

お子さんによって差が大きく、期間ではお答えしにくい部分です。
ただ、変化は「強くなった」という形では現れません。反応が薄くなるという形で現れます。
騒がなくなった、動じなくなった、という変化に注目してみてください。

Q. プログラミング以外でも同じ効果は得られますか?

得られます。
条件はやり直しのコストが低いことと、うまくいかない理由が自分で分かることの2つです。
この2つを満たす活動であれば、分野は問いません。
プログラミングは、この条件を特に満たしやすいというだけです。

まとめ

子どもが失敗を怖がるのは、性格でも弱さでもありません。
失敗に大きな代償が付いてくる経験を重ねてきたからです。

だとすれば、必要なのは気合いを入れさせることではなく、
代償のない失敗をたくさん経験できる場所を用意することになります。

プログラミングがその場所になりやすいのは、次の3つの理由からです。

  1. エラーが評価ではなく、情報として返ってくる
  2. 何度やり直しても失うものがない
  3. 原因を直せば必ず動く

そして目指したい状態は、失敗を乗り越える強さではありません。
「わかんない!」が「あれ?」に変わること。失敗が、失敗として登録されなくなることです。

ご家庭でできることは3つ。
プロセスに触れる。指示を問いかけに変える。親自身が自分の失敗に優しくなる。
どれも今日から始められます。

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