「プログラミングって、本当に必要なんでしょうか」
これは保護者の方から、もっともよく出る疑問だと思います。
学校で必修になったとは聞くけれど、うちの子がIT関係の仕事に就くとは思えない。
それなら急いで習わせる意味はあるのだろうか——そう考えるのは、とても自然なことです。
この記事では、その疑問に精神論ではなく、制度の事実からお答えします。
先に結論をお伝えすると、プログラミング教育は「小学校で少し触って終わり」ではありません。
小学校から大学入試までが、すでに一本の線でつながっています。
そして2025年、その線の終点が大きく動きました。
まずはそこから見ていきましょう。
プログラミング教育は、いつから必修になったのか
小学校・中学校・高校で、すでに全学年に導入されている
「必修化」という言葉はよく聞きますが、具体的にいつ、どこで始まったのかは意外と整理されていません。
時系列で並べると、こうなります。
| 時期 | 対象 | 内容 |
|---|---|---|
| 2020年度 | 小学校 | プログラミング教育が必修化。独立した教科ではなく、算数・理科・総合などの中で扱われる |
| 2021年度 | 中学校 | 技術・家庭科(技術分野)でプログラミングの内容が拡充 |
| 2022年度 | 高校 | 「情報Ⅰ」が必履修科目に。全員が学ぶ科目となった |
つまり今の小学生・中学生は、全員が学校でプログラミングに触れる世代です。
習わせるかどうかを選べる時代ではなく、
すでに学校のカリキュラムに入っている、というのが出発点になります。
2025年からは、大学入試の科目にもなった
そして流れは高校で止まりませんでした。
2025年度の大学入学共通テストから、「情報」が正式な出題教科として加わりました。
これにより共通テストは6教科から7教科に拡大し、
国立大学を受験する場合は、原則として「情報Ⅰ」が必須科目となっています。
2026年度もこの体制が続いています。
出題される内容には、情報社会の問題解決やデータの活用と並んで、
「コンピュータとプログラミング」が含まれます。
実際にプログラムの動作を読み取る問題が出題されており、
用語を暗記するだけでは対応できない構成になっています。
さらに注目したいのが、この1年での変化です。
初年度の2025年度は比較的得点しやすい出題だったと分析されていますが、2026年度は平均点が大きく下がりました。
情報Ⅰが「軽く対策すれば済む科目」から、受験生の間で差がつく科目へと移り始めている、ということです。
今の小学生にとって、入試までは地続きになっている
ここまでを整理すると、こうなります。
小学校(2020年度)→ 中学校(2021年度)→ 高校の情報Ⅰ(2022年度)→ 大学入試(2025年度)
10年前であれば、プログラミングは「興味のある子がやる特別なこと」でした。
しかし今は、小学校で始まった学びが、そのまま大学入試の得点に接続する構造になっています。
これは「将来IT企業に就職するかどうか」とは無関係の話です。
国公立大学を目指すのであれば、進路の希望が文系であっても情報Ⅰは避けられません。
学校で「もう知っている」状態は、思った以上に効く
もう一つ、教室で実際にあった話をご紹介します。
ぽてぽーとの生徒が、学校の授業でもプログラミングをやったと話してくれたことがあります。
内容としてはごく簡単なものだったそうですが、その子はこう続けました。
「友達に教えてあげた」
先に触れていたから、学校で戸惑わずに済んだ。
それだけでなく、教える側に回れた。
これは学力の話ではなく、授業に対する姿勢の話です。
同じ単元を「よく分からないもの」として受けるか、「知っているもの」として受けるかで、その時間の意味はまったく変わります。
必修化されているということは、先に触れておくと学校でそのまま活きるということでもあります。
なぜ国はここまで力を入れているのか
制度の話は分かった。では、なぜここまで急いで導入されたのでしょうか。
理由は2つに集約されます。
あらゆる業界がデジタル化した
医療、農業、建築、金融、小売、教育——ほぼすべての業界で、デジタル技術が業務の中心に入りました。
ここで重要なのは、求められているのが「パソコンを操作できる人」ではないという点です。
必要とされているのは、仕組みを理解して、目的に合わせて使える人です。
たとえば同じ表計算ソフトを使っても、手作業を延々と繰り返す人と、処理を自動化してしまう人がいます。
この差を生んでいるのが、プログラミング的な考え方です。
AIが普及して、人に求められる力が変わった
もう一つの理由がAIです。
調べれば分かること、手順が決まっている作業は、AIが担う領域になりました。
その結果、人に残る仕事の中身が変わりました。
- 何を問うべきかを決める
- 出てきた答えが妥当かを判断する
- 目的に合わせて手順を組み立てる
これらは、いずれも筋道を立てて考える力を必要とします。
国が育てようとしているのは、まさにこの部分です。
【誤解しやすい点】プログラマーを育てる教育ではない
ここが、必修化について最も誤解されているところです。
必修化の目的は「プログラミング的思考」
小学校の必修化について、文部科学省は「プログラマーを養成するため」とは説明していません。
目的として掲げられているのは「プログラミング的思考の育成」です。
これは、次のような考え方の総称です。
- やりたいことを、手順に分解する
- どの順番で並べれば目的を達成できるかを考える
- うまくいかないとき、原因を切り分けて特定する
コードを書く技術そのものではなく、その手前にある考え方が対象になっています。
この「プログラミング的思考」を、もう少し具体的な動作として説明したものが 子どもの「考える力」とは何か?育ったかどうかを見分ける3つのサイン です。
育ったかどうかをどう見分けるかも書いています。
だからIT職に就かなくても、意味がある
上に挙げた3つを読み返してみてください。
プログラミング以外の場面でも、そのまま使えることに気づくと思います。
料理の段取りを考える。
旅行の計画を立てる。
宿題をどの順番で片付けるか決める。
仕事で問題が起きたとき、どこが原因かを絞り込む。
プログラミングは、この考え方を練習するための教材として選ばれているというのが実態です。
将来の職業とは切り離して考えて差し支えありません。
子どものうちから学ぶと、何が身につくのか
ここからは、実際に身につく力を5つに整理します。
それぞれ詳しく解説した記事があるので、気になるものはリンク先をご覧ください。
① パソコンの基本操作に慣れる
マウス操作、キーボード入力、ファイルの扱い。
学校でも仕事でも前提になる技能を、遊びの延長で身につけられます。
特にタイピングは、早く始めたぶんだけ差が出ます。
② 筋道を立てて考える力が育つ
「順番」「条件」「くり返し」を組み合わせて目的を達成する経験が、論理的に考える習慣をつくります。
学校の学習との具体的なつながりについては、プログラミングの習い事、意味ない?学校の勉強とのつながりから見るメリット で詳しく解説しています。
③ 失敗しても手が止まらなくなる
プログラミングでは思ったとおりに動かないことが頻繁に起きます。
そのたびに原因を考え、直して試す。この繰り返しが粘り強さを育てます。
詳しくは 子どもが失敗を怖がるのはなぜ?「失敗を楽しめる子」に変わる関わり方 をご覧ください。
④ 「自分にもできる」という自信がつく
うまく動いた瞬間の達成感が、次の挑戦につながります。
自信が育つ仕組みと、自信につながる成功体験の条件については 子どもに自信をつけるには?「できた!」が積み重なる習い事の選び方 で解説しています。
⑤ 自分から動けるようになる
手を動かさなければ何も起きない学びなので、自然と主体的な姿勢が育ちます。
この点は 自走力のある子どもの育て方|プログラミングで「自分から動く力」が身につく理由 で詳しくお話ししています。
なお、プログラミングそのものの定義や、教育として注目されている背景については プログラミングとはなにか?近年注目の教育を解説! をご覧ください。
学び方の選択肢と、向いている子・向かない子
「必要性は分かったけれど、どう学ばせるか」が次の問題になります。
方法は4つあり、それぞれ性格が違います。
| 学び方 | 費用 | 向いている子 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 学校の授業 | なし | まず入口として全員 | 時間数が限られ、深く進むことは難しい |
| 家庭学習(本・教材) | 低 | 自分で読み進められる子 | つまずいたとき保護者が対応できないと止まる |
| アプリ・ゲーム | 低〜中 | 遊びから入りたい子 | 遊びで終わり、作る側に進みにくいことがある |
| 教室に通う | 中〜高 | 質問できる相手が必要な子 | 費用がかかる。通学型は送迎の負担も |
どの方法にも良さがあります。
ただ、共通して言えることが一つあります。
「やらされている」と感じた時点で、どの方法でも続きません。
逆に「もっとやりたい」と思えていれば、方法は何であれ伸びていきます。
選ぶときの基準は、費用や知名度よりも続けられそうかどうかに置くのが結果的に近道です。
よくある質問
Q. 何歳から始めるのがいいですか?
小学校低学年から始められます。
ただし早さより「楽しいと感じられるか」が重要です。
Scratchのようなブロック型の教材であれば、文字入力に慣れていなくても取り組めます。
Q. 文系志望なら、必要ないのでは?
国公立大学を目指す場合、文系志望でも共通テストで情報Ⅰが原則必要になります。
進路の方向に関係なく、避けにくい科目になったと考えたほうが実態に近いです。
Q. 学校でやるなら、わざわざ習わせなくてもいいですか?
学校の授業だけでも基礎には触れられます。
ただし授業時間は限られており、扱う内容も基本的なところまでです。
もう少し先まで進みたい場合や、つまずいたときに聞ける相手が欲しい場合は、学校の外の環境が役に立ちます。
Q. 親にプログラミングの知識がないと難しいですか?
必要ありません。
ブロック型の教材は子どもが直感的に扱えるように作られています。
保護者に求められるのは教えることではなく、続けられる環境を用意することです。
Q. 大学入試まで見据えると、今から何をすべきですか?
小学生の段階で入試対策を意識する必要はありません。むしろ逆効果になります。
今の時期に有効なのは、プログラミングを「難しくて嫌なもの」にしないこと。
抵抗感がない状態で高校に進めれば、それが最大の準備になります。
まとめ
プログラミングが必要とされている理由は、精神論ではなく制度の事実として説明できます。
- 2020年度に小学校で必修化され、中学校・高校へと広がった
- 2022年度から高校で「情報Ⅰ」が必履修になった
- 2025年度から大学入学共通テストの出題教科となり、国立大学志望者には原則必須になった
- 2026年度は平均点が下がり、差がつく科目になり始めている
小学校から大学入試までが、すでに地続きです。
ただし、必修化の目的はプログラマーの養成ではありません。
手順に分解して考える力を育てることが狙いであり、その力は職業を問わず役に立ちます。
そして小学生の今、いちばん大切なのは入試対策ではなく、
プログラミングを楽しいものとして経験しておくことです。
抵抗感なく高校に進めることが、結果的に最良の準備になります。
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- 答えをすぐに教えず、どこまで自分でできたかを先に聞く — 「自分でできた」を子どものものにするためです
- 困ったときは、いつでもすぐ相談できる — 質問できる相手がいる安心感があります
「必要そうだけど、うちの子に合うか分からない」 「まずは嫌いにならない形で触れさせたい」
そんな段階の方こそ、一度体験してみてください。
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