子どもが習い事をやめたいと言ったら?「やめたい」の中身を分けて考える

「〇〇を辞めたい」を親に相談する小学生

「もう行きたくない」 「やめたい」

そう言われたとき、すぐには答えられないと思います。
続けさせるべきか、やめさせるべきか。
どちらを選んでも、後で「あれでよかったのか」と考えることになります。

先に立場をはっきりさせておきます。

この記事では、「続けましょう」とも「やめましょう」とも書きません。

私たちは教室を運営している立場なので、「やめないほうがいい」と都合の良いことばかり言っても説得力がありませんね。
なにより、ご家庭の事情は、外からは分かりません。

この記事でできるのは、判断の材料を渡すことだけです。

判断の基準は、実はシンプルです

保護者の方から「続けさせるべきか」とご相談をいただくことがあります。
そのとき、こうお答えしています。

お子さんが楽しんでいるかどうかで、判断していいと思います。

上達しているか、月謝に見合っているか、他の子と比べてどうか——そういった基準より、これが一番確実です。

楽しんでいれば続きますし、続けば身につきます。
楽しくないものを続けても、時間だけが過ぎます。

ただし「楽しくない」には、理由があります

そして、ここからが本題です。

「楽しくない」で終わらせると、判断できません。

なぜなら、楽しくない理由によって、打つ手がまったく変わるからです。

難しすぎて楽しくないのなら、難易度を下げれば戻ってきます。
興味がなくて楽しくないのなら、それは別の話です。

同じ「やめたい」でも、中身が違います。

「やめたい」の中身は、5つに分かれます

お子さんの「やめたい」が、どれに当てはまるか考えてみてください。

「やめたい」の中身5つ(難しくてつらい・興味がなくなった・疲れている・人と合わない・他にやりたいことができた)と、それぞれの打つ手を対応させた図

① 難しくてつらい

いちばん多いパターンだと思います。

内容が本人の今の位置より高くなっていて、進めなくなっている状態です。

これは、直せます。
難易度を下げる、聞ける相手を用意する、進み方を変える——環境の側で調整できる問題です。

そしてこの段階でやめてしまうと、もったいないことがあります。
壁の手前で止まっているだけなので、越えれば景色が変わる可能性があります。

見分け方: 「難しい」「わからない」という言葉が出てくる。特定の場面で止まっている。

② 興味がなくなった

やってみたけれど、思っていたものと違った。あるいは、最初はよかったけれど気持ちが離れた。

これは、正直に受け止めていい理由です。

興味がないものを続けても、身につきません。
「せっかく始めたのだから」で続けるのは、お互いにとって損です。

後半で詳しく書きますが、やめる判断が適切な場合があります。

見分け方: 内容そのものに反応しない。他の話題では元気がある。

③ 疲れている

習い事そのものではなく、生活全体の問題です。

予定が詰まっている、他の習い事や部活が忙しい、学校で疲れている——そういうときは、何をやっても行きたくなくなります。

これも直せます。
ただし直すのは習い事の中身ではなく、予定の組み方です。

見分け方: 特定の時期だけ言う。他のことも面倒くさがっている。

習い事の負荷の考え方については 習い事は何個まで?数より「予定の埋まり方」で考える で整理しています。

④ 人と合わない

先生との相性、他の子との関係。
内容は好きなのに、その場に行きたくないというパターンです。

これは本人にはかなり言いにくいので、表に出にくい理由でもあります。
「なんとなく」「別に」という答えの裏にあることがあります。

内容が好きなら、環境を変えれば続きます。
教室を移る、形式を変えるという選択肢があります。

見分け方: 内容の話はするのに、行く話になると渋る。理由を言いたがらない。

⑤ 他にやりたいことができた

優先順位が変わっただけです。ネガティブな理由ではありません。

子どもの興味は動きます。
今やりたいことがはっきりしているなら、そちらに時間を移すのは自然な判断です。

見分け方: 「〇〇をやりたい」という具体的な希望がある。

中身を聞き出す、3つの質問

分けて考えるといっても、本人がうまく説明できるとは限りません。

「なんで?」と聞いても、答えられません

つい「どうしてやめたいの?」と聞いてしまいますが、この質問はうまくいかないことが多いです。

理由は2つあります。

  • 本人も、自分の気持ちを整理できていない
  • 「やめたい」と言ったことを、責められていると感じる

結果、「別に」「なんとなく」で終わります。

使いやすい質問

代わりに、具体的な場面を聞くほうが答えやすくなります。

「行く日と、行かない日で、気分は違う?」 → ③疲れているのか、④人と合わないのかが見えてきます

「〇〇(内容)は、好き?」 → ②興味の問題か、それ以外かが分かれます

「最近、どのへんが難しい?」 → ①難しさの問題かどうかが確認できます

「やめる/やめない」の話をいったん脇に置くのがコツです。
判断の話になると、子どもは身構えます。

やめる前に、変えられるものがあります

理由が①③④のどれかだった場合、やめる以外の選択肢があります。

難易度を変える

進度を落とす、前の内容に戻る、簡単なものを挟む。

「戻るのは後退」と感じるかもしれませんが、できる状態に戻すほうが、結果的に早く進みます。

頻度を変える

週2回を週1回にする。しばらく間を空ける。

疲れているときは、量を減らすだけで戻ってくることがあります。「やめる」の前に「減らす」を試す余地があります。

形式を変える

通う教室を変える、オンラインに切り替える、個別に変える。

内容が好きなのに環境が合っていない場合、これがいちばん効きます。
同じことを別の場所で続けられるなら、やめる必要はありません。

「続けるか、やめるか」の二択にする前に、この3つを確認してみてください。

やめたほうがいい場合もあります

ここは、はっきり書いておきたい部分です。

興味がないものを続けても、身につきません

②のケース——本人が内容に興味を持てていない場合、続けても得るものは多くありません。

「継続は力なり」と言いますが、それは続けたいものを続けた場合の話です。
行きたくない場所に通い続けることで身につくのは、我慢する力であって、その習い事の内容ではありません。

「続けさせられた」という記憶が残ります

そしてもう一つ、見落とされやすい点があります。

無理に続けさせると、その分野そのものを嫌いになることがあります。

ピアノを嫌々続けた子が、大人になって音楽に触れなくなる。
内容ではなく、「やらされた記憶」のほうが残るというのは、実際によくある話です。

やめておけば、また戻ってくる可能性が残ります。
嫌いになってしまうと、その可能性が消えます。

やめるのは、失敗ではありません

「一度始めたことは続けるべき」という考え方もあります。それ自体は否定しません。

ただ、合わなかったと分かったこと自体が、一つの結果です。
やってみなければ分からなかったことなので、時間は無駄になっていません。

やめると決めたら、やっておきたいこと

やめる判断をした場合に、一つだけおすすめしたいことがあります。

「できるようになったこと」を確認してから終わる

やめるとき、そのまま自然消滅させないほうがいいと思います。

短い期間でも、始める前にはできなかったことが必ずあります。

  • 前はできなかった〇〇が、できるようになった
  • 続けてみて、△△が分かった

これを言葉にしてから終わる。それだけで、記憶の残り方が変わります。

「途中でやめた」ではなく「やってみて、ここまでできた」になる。
次に何かを始めるときの、ハードルが変わってきます。

失敗の扱い方については 子どもが失敗を怖がるのはなぜ?「失敗を楽しめる子」に変わる関わり方 でも詳しく書いています。

参考:教室側から見た「サイン」

最後に、教室を運営している側の視点も少しお伝えします。

「やめたい」と言われる前に、来る頻度が落ちることがあります。

当教室は回数が決まっていない形式なので、来なくなっても表面上は分かりにくいという弱点があります。
そこで、20日間来ていない生徒には、こちらから連絡するようにしています。

この20日という区切りに、特別な根拠があるわけではありません。
ただ、それ以上空くと戻りにくくなるという感覚があるためです。

保護者の方にとっても、「行きたくない」と言われる前の変化は見ておく価値があると思います。

  • 行く前の様子が変わった
  • 帰ってきてから、話をしなくなった
  • 準備を後回しにするようになった

言葉になる前に、行動に出ることが多いです。

よくある質問

Q. 「一度始めたことは最後まで」と教えるべきでしょうか?

ご家庭の方針によります。
ただし「最後」がいつなのかは、習い事によっては決まっていません。
期限のないものを「最後まで」と言うと、やめどきが永遠に来なくなります。

Q. すぐにやめさせると、忍耐力がつかないのでは?

忍耐力は、やりたいことの途中でつくものだと考えています。
行きたくない場所に通い続けることでつくのは、我慢する習慣のほうです。

Q. 月謝がもったいないと感じてしまいます

気持ちは自然です。
ただし、行きたくない状態で通わせても、その月謝は同じように使われています。
「もったいないから続ける」は、費用の面でも効果が出にくい判断になります。

Q. 子どもが理由を言ってくれません

「なんで?」ではなく、具体的な場面を聞いてみてください。
「行く日と行かない日で気分は違う?」「〇〇は好き?」といった質問のほうが答えやすくなります。

Q. 一度やめて、また始めることはできますか?

多くの教室で可能です。
やめる前に、再開する場合の条件(入会金が再度必要かなど)を確認しておくと、判断しやすくなります。

Q. 兄弟の片方だけがやめたいと言っています

別々に判断して問題ありません。
同じ習い事でも、合う子と合わない子がいます。片方に合わせる必要はないと思います。

まとめ

「やめたい」は結論であって、理由ではありません。

判断の基準はシンプルで、お子さんが楽しんでいるかどうかです。ただし「楽しくない」理由は5つに分かれます。

中身打つ手
① 難しくてつらい難易度を下げる/聞ける環境にする
② 興味がなくなったやめる判断も適切
③ 疲れている頻度を減らす/予定を見直す
④ 人と合わない環境を変える
⑤ 他にやりたいことができた入れ替えを検討する

①③④なら、やめる前に変えられるものがあります。
難易度・頻度・形式の3つを確認してみてください。

②なら、やめる判断が適切な場合があります。
興味がないものを続けても身につきませんし、無理に続けさせると、その分野そのものを嫌いになることがあります。

そして、やめると決めたら——「できるようになったこと」を確認してから終わってください。
「途中でやめた」ではなく「やってみて、ここまでできた」になります。

やめることは、失敗ではありません。

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